vocaloid の可能性は、使い手の使い方に依存する。
2007-10-20


ケント紙とペンとトーンとカッターを使うプロの人の作品を、ケント紙とペンとトーンとカッターを使って真似する同人さんが、後にケント紙とペンとトーンとカッターを使うプロになる可能性は、十二分にあると思う。

でも、歌を歌うプロの人の曲を、Vocaloid に真似して歌わせるニコニコ職人さんが、後に歌を歌うプロになる可能性も、Vocaloid を用いた作品を創造するプロになる可能性も、当面は薄いと言わざるを得ないんじゃないかと思う。

id:araignet さんが言いたかったのは、そういうことなんじゃないかな。未来を感じないのは Vocaloid というツールそのもののことじゃなくて、「初音ミク」を擁するここしばらくのネット上での盛り上がりのことなのではないかと。

ニコニコでの盛り上がりを、「初音ミク」をキーワードにして語る人は多いけれど、よくよく読んでみるとそれは「初音ミク」がすごいんじゃなくて「ニコニコ」がすごい、って暗に語っちゃっているものがほとんどなのよね。おいらもニコニコは Web サービスとしてはすごいものだと思うけれど、でもそれが初音ミクなしに語れるものなのかって言うと、ちょっと違うと思う。他にもいくらでも面白いコンテンツが、あそこにはごろごろしてるよ。

残念ながら、Vocaloid の技術的なすごさを評価するような声が、「初音ミク」を擁する盛り上がりのすごさを評価する声と、その声を「初音ミク」というパッケージのすごさだと勘違いして盛り上がる声によって、かき消されちゃってる部分はあると思う。結果として、まだまだ改善の余地も発展性もある技術が、現時点で素人視点において過大評価されちゃってる。こういう盛り上がり方が突発的になってしまいがちなのを経験的に心得ているおいらとしては、ちょっと残念な展開だなとも思う。

思うに、Vocaloid に対する Vocaloid2 シリーズの位置づけは、歌声のリアルさよりも、ツールとしての使い勝手のよさに重点が置かれていることにあるんじゃないかと、これまでに創られてきた作品を聴いてきた限りでは思う。DTM ってのは玩具であって遊びなワケなんだけれども、そういう意味ではまた最高に面白い玩具が生まれたな、と個人的には歓迎していた。技術的な面においても非常に興味深い。

でも、たかがヴォーカルシンセごときを殊更に持ち上げて、「テレビ局はもっと危機意識を抱くべきだ」みたいに人心を煽るのは、それほど期待通りの展開にはならないだろうなという予測を以って、あまりにも酷な仕打ちだと、おいらは思う。

小寺さんとか、放送業界を経験しているジャーナリストにも、本音をうかがってみたいでつね。

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