曖昧なのは「死」という言葉の使い方の方なのでは…
2015-06-29


曖昧な言葉というのは存在します。その言葉が使われるようになった経緯上、はっきりとした意味合いが定義づけられていないような言葉のことです。インターネット関連の言葉でいうと、例えば「クラウド (コンピューティング)」は曖昧な言葉と言えるだろう。今でこそそれなりの共通認識を以って使われる言葉となりつつはあるようだが、その言葉が使われ始める前後を比較するような議論に、ビジネス上の宣伝文句以上の意味はないのではないかと思われる。

ところで、スマートフォンなどに代表されるモバイルデバイスの普及と、 Web アプリのクライアントがモバイルデバイス用に実装された個別の専用アプリに置き換えられてゆく現象 (あるいは、これまで Web アプリとしてリリースされてきたようなサービスがモバイルアプリとしてリリースされるようになってきている現象) を以って、「Web は死ぬ」のではないかとする議論が一部で持ち上がってきているらしい。へー。

リンク先記事の主張を要約すると以下のようになると思う。

  1. この議論において、「Web」という言葉が曖昧に扱われているので、「Web は死ぬ (or 死なない)」という時の「Web」という用語について、その定義を各々明確にしておくべきである。
  2. (モバイル) アプリによって Web は死ぬと思われる。但し、このとき著者が「Web」という言葉を持って指し示される概念は、以下の通りである。
    • Web サイト
    • Web ブラウザ
    • Web アプリ

記事中ではこれに対し、死ぬことはないだろうと思われる概念についても記述されている。詳しくは当該記事本文をご参照願いたい。

「Web」という言葉の曖昧性?

さて、のっけから前提事項を覆すようで申し訳ないのだが、そもそも Web という言葉自体はそこまで曖昧な言葉だろうか? 確かに、経済学者やビジネスコンサル、ネットビジネス評論家含むメディア関係者などに言わせればとたんに曖昧な言葉になってしまうものかもしれないが、クラウドみたいな命名経緯自体が曖昧な言葉に比べれば、ティム・バーナーズ=リーの発明品である Web はそれよりずっと明快な言葉であると言えるだろう。

一応おさらいしておくと、ここで言う Web とは World Wide Web の略称であり、以下の 3つの技術を柱として構成されるハイパーテキストシステムのことである。

  1. HTTP

    Hypertext Transfer Protocol の略。情報処理技術全般を学んだことのある人であれば「アプリケーション層のプロトコルの一種」という説明で通じるのだが… 要するに Web で扱われる通信上のやり取り (GET: (コンテンツの)取得、 POST: (フォームデータの)送信、等々…) を処理する通信方式の規格である。ポート番号が標準的に割り振られていて、通常、平文のものは 80番、 SSL を用いたセキュアなものは 443番を使用する。

  2. URI (URL)

    コンテンツを同定する場所を表す名前として定義された URL (Uniform Resource Locator) という概念は、そのままあらゆる固有概念を同定する名前として URI (Uniform Resource Identifier) という概念へと拡張された。スキーマ名、ドメイン・ホスト名 (または IP アドレス) (+ポート番号)、ロケーションパス、プラスアルファの情報を一行の文字列にぎゅっと押し込めたもので、通常 Web ブラウザのアドレスバーに表示されるアレのことである。

    この名前をメモっておく (ブックマークに入れておく) ことで同じコンテンツに何度でもアクセスできるし、この名前を指定して記事から記事へとリンクを貼ることもできる、と説明すれば、これが Web において如何に重要な概念であるかは理解できるだろう。

  3. HTML


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