「ブラック会社」がブラックにならざるを得ない社会的背景
2009-07-10


どこかのうんこブログがリンク先記事への回答として「雇用流動性が低いからこうなる、解雇規制を撤廃すべきだ」などと極めてうんこな事をほざいていらっさいますが (腹立たしいのでいちいちリンクしません)、まぁそれはそれとして。

ブラック会社、あるいはブラック企業というのは、要するに労働環境が劣悪で、しかも社員の多くがそうした状況に疑念を抱かない、あるいは諦めてしまっている社畜ばかりである、といったような状況に陥っている会社のことを指し、そう言った現象について、経営者対労働者の構図で物を語る人が多かったりする概念です。

実際のところ、こうした現象というのは必ずしもそのような単純な物であるとは限りません。特に、SI 業界に関して言うなれば、顧客企業との軋轢、上流・下流やコンサルなどといった工程を切り分けるスタイルによる分業と、それに伴うピラミッド型の下請け構造、中小企業への支援制度が手薄な行政、などといったものが背景に横たわっており、その結果として、不利な条件で事業を請け負わなければならない零細ソフトハウスの苦渋、ご贔屓さんとの政治的おつきあい、さらには会社規模でいえば一流の筈なのに部署や取引先によって明暗がくっきり分かれるなんて事もざらにあったりする訳です。

もちろん、労基法がないがしろにされ、労働者の権利が踏みにじられている現実は、どうにかする必要があるでしょう。内部告発が増えてきているのは好ましいことですが (今のところニュースになっているのは飲食業界が多いですが)、罰則規定を強化し、労働者の権利侵害が悪であるということを政府の態度として明確にすべきだというご意見は、確かにごもっともであると思います。しかし、それとセットで同時に解決して欲しい問題がいくつかあるのも事実です。

ことソフトウェア業界に関していうならば、以下のような問題が横たわっている訳ですが…

  1. 作業領域が工程によって分断される為、下請け構造が根深く、企業間の上下関係がはっきりしてしまっている。
  2. 企業の技術力を推し量る基準が存在しない為、無名な中小零細企業は営業面において不利を強いられている。
    • 品質管理能力については一応 ISO 9001 というのが存在するが、そもそもテストを切り詰めろなどといった品質をないがしろにする要求をしてくる顧客が未だに多く、業種によってはあまり重視されないケースも少なくない。
  3. システム開発の適正価格が理解を得にくい為に、市場自体にダンピングの発生しやすい土壌ができあがってしまっている。
    • これに対し、システム構成を無駄にリッチにする、オープンではない技術を多用し、保守を入れ替え不可能にして独占する、などの (顧客側の無知を逆手に取った) 悪質な商習慣も横行している。
  4. 起業支援が手薄な為、新規に事業を興そうとするものが少なく、いても先立つものがない為に、SI 事業の下請けの末端として仕事を受けざるを得ないという状況がある。


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